学術活動

2026.05.02

矯正治療と歯周病の意外な関係|歯並びを整えることが歯ぐきの健康につながる理由


「歯並びが気になるけれど、矯正治療って歯を動かすだけでしょ?」——そう思っていらっしゃる方は、少なくないのではないでしょうか。実は、矯正治療と歯周病(歯ぐきの病気)には、切っても切れない深い関係があります。歯並びを整えることが歯ぐきの健康を守ることにつながり、逆に歯ぐきの状態を無視した矯正治療は思わぬリスクを招くこともあるのです。

今回は、矯正治療と歯周病の関係について、わかりやすくお伝えしたいと思います。歯並びにお悩みの方はもちろん、歯ぐきの健康が気になっている方にもぜひ読んでいただきたい内容です。「矯正治療を受けたいけれど、歯ぐきが心配」「歯周病があるけど矯正できるの?」といった疑問にもお答えしていきます。


そもそも歯周病ってどんな病気?

まず、歯周病について改めてご説明しましょう。歯周病は、歯と歯ぐきの間にたまった細菌(プラーク)が原因で起こる感染症です。初期の段階では歯ぐきが赤く腫れたり、歯磨きのときに出血したりする程度ですが、進行すると歯を支えている骨(歯槽骨)が少しずつ溶けていきます。最終的には、歯がぐらぐらして抜けてしまうこともある、実はとても怖い病気です。

日本人の成人の約8割が何らかの歯周病の症状を持っていると言われており、決して他人事ではありません。痛みがなく静かに進行するため、「サイレントディジーズ(静かな病気)」とも呼ばれています。歯が痛くなってから歯科医院を受診したときには、すでに歯周病がかなり進行していた——というケースは、残念ながら珍しくありません。

歯周病の怖さは、お口の中だけにとどまりません。近年の研究では、歯周病が糖尿病や心臓疾患、脳卒中などの全身疾患と関連していることが明らかになってきました。お口の健康を守ることは、全身の健康を守ることにもつながるのです。


歯並びが悪いと、なぜ歯周病になりやすいの?

歯並びが乱れていると、歯と歯の間や歯と歯ぐきの境目に歯ブラシが届きにくくなります。毎日丁寧に磨いているつもりでも、重なり合った歯の裏側や、段差になっている部分には汚れが残りやすいものです。

たとえば、前歯が重なり合っている「叢生(そうせい)」と呼ばれる状態では、歯と歯の間に食べかすやプラークがたまりやすく、歯ブラシだけでは十分に清掃できません。また、デコボコした歯並びの場合、歯間ブラシやフロスを使おうとしても、うまく通らないことがあります。

この磨き残しこそが、歯周病菌のすみかとなります。プラークがたまりやすい環境が長く続くと、歯ぐきの炎症が慢性化し、気づかないうちに歯周病が進んでしまうのです。最初は歯肉炎(歯ぐきだけの炎症)として始まりますが、放置すると歯周炎(骨まで影響が及ぶ状態)へと進行していきます。

さらに、歯並びの乱れは「噛み合わせ」にも影響します。正常な噛み合わせでは、食べ物を噛む力がすべての歯に均等に分散されます。しかし、歯並びが乱れていると、特定の歯に過剰な力がかかり続けることになります。この過剰な咬合力は「咬合性外傷」と呼ばれ、歯周病の進行を加速させる要因の一つです。歯周病による炎症に加えて、噛む力の負担が加わることで、骨の吸収がさらに速まってしまうのです。

出っ歯(上顎前突)の場合も注意が必要です。前歯が前方に出ていると、口を閉じにくくなり、口呼吸の原因になることがあります。口呼吸はお口の中を乾燥させ、唾液による自浄作用が低下するため、プラークがつきやすくなり、歯周病のリスクが高まります。

つまり、歯並びの改善は見た目だけの問題ではなく、歯周病のリスクを根本的に下げるための大切なアプローチでもあるのです。


矯正治療をすれば歯周病は治る?

ここで一つ、大切なポイントがあります。矯正治療は歯並びを整えることで歯周病の「リスクを下げる」効果がありますが、すでに起きている歯周病を「治す」治療ではありません。

矯正治療はあくまで歯を正しい位置に動かす治療です。歯周病の原因である細菌を取り除いたり、失われた骨を回復させたりする効果は、矯正治療単体にはありません。

もし歯周病がある状態でそのまま矯正治療を始めてしまうと、歯を動かす力が弱った歯周組織にさらなる負担をかけてしまい、かえって症状が悪化してしまう可能性があります。具体的には、歯を支える骨がさらに減ってしまったり、歯ぐきが大きく下がってしまったり、最悪の場合は歯を失ってしまうリスクもあります。

そのため、矯正治療を始める前には、歯ぐきの状態をしっかりと検査し、歯周病がある場合はまず歯周治療を行って炎症をコントロールすることが非常に重要です。歯周ポケット(歯と歯ぐきの間の溝)の深さが正常範囲に戻り、出血や腫れがなくなった状態——つまり「歯周組織が安定した状態」になって初めて、安全に矯正治療を始めることができるのです。

この「まず歯周治療、それから矯正」という治療の順序は、大人の矯正治療において特に重要なポイントです。


矯正中の歯周管理が大切な理由

矯正治療が始まってからも、歯周管理は欠かせません。むしろ、矯正治療中こそ、歯ぐきの健康に注意を払う必要があります。

ブラケットやワイヤーなどの矯正装置が歯に付いている状態では、装置の周りにプラークがたまりやすく、普段よりも歯磨きが格段に難しくなります。特にワイヤーの下や、ブラケットと歯ぐきの境目は磨き残しが生じやすい場所です。プラークが蓄積すると、歯ぐきが炎症を起こし、腫れたり出血したりすることがあります。

マウスピース型の矯正装置(アライナー)の場合も、プラークコントロールは重要です。マウスピースで歯が覆われている間は、唾液による自浄作用が届きにくくなります。食事の後にしっかり歯磨きをしてからマウスピースを装着しないと、マウスピースの中で細菌が繁殖してしまう恐れがあります。

せっかく矯正治療できれいな歯並びを手に入れても、その過程で歯周病が進行してしまっては本末転倒です。矯正治療中は、ご自身での丁寧なブラッシングに加えて、定期的にクリニックでプロフェッショナルクリーニング(PMTC)や歯周検査を受けることが大切です。

矯正の治療経過を見ながら、歯ぐきの状態もあわせてチェックし、問題があれば早期に対処する——この「矯正治療と歯周管理の二人三脚」が、安全で効果的な矯正治療の鍵となります。

矯正治療を専門に行うクリニックの中には、矯正の技術には長けていても、歯周治療については別の医院を紹介するというケースもあります。しかし、矯正と歯周治療が同じクリニックで一貫して受けられる環境であれば、治療の連携がスムーズになり、ちょっとした歯ぐきの変化にも素早く対応することが可能です。


治療前⇧

歯並びも悪く、歯周病が全体に渡り歯肉も下がってしまっている状況

治療終了後⇧

歯周再生治療と矯正治療を組み合わせ、良好な治療結果を得る事が出来た

矯正治療後のメンテナンスも忘れずに

矯正治療が終わって装置が外れた後も、歯周管理は続きます。いえ、治療が終わってからこそ、継続的なメンテナンスが重要です。

矯正治療で整った歯並びを長く維持するためには、リテーナー(保定装置)の適切な使用とともに、定期的な歯科検診やプロフェッショナルクリーニングが欠かせません。一般的にメンテナンスの頻度は3〜4か月に1回が目安ですが、歯周病のリスクが高い方はより短い間隔での通院をお勧めする場合もあります。リテーナーも、ブラケットやマウスピースと同様にプラークが付着しやすいため、毎日のお手入れが必要です。

せっかく整った歯並びも、歯周病が進行して歯を支える骨が失われてしまうと、再び歯が動いてしまうことがあります。これは「病的歯牙移動」と呼ばれ、歯周病による骨の喪失が原因で歯の位置が変わってしまう現象です。矯正治療前の歯並びの乱れが、実は歯周病による病的歯牙移動だったというケースも少なくありません。

「治療が終わったら安心」ではなく、「治療が終わってからが本当のスタート」と考えていただくことが大切です。定期的なメンテナンスを通じて、美しい歯並びと健康な歯ぐきの両方を長く守っていきましょう。


よくあるご質問

矯正治療と歯周病に関して、患者さんからよくいただくご質問にお答えします。

Q. 歯周病があっても矯正治療はできますか?
歯周病があるからといって、矯正治療が一切できないわけではありません。ただし、歯周病がコントロールされていない状態で矯正を始めることはできません。当院では、まず歯周治療を行い、歯ぐきの炎症が落ち着いてから矯正治療を開始します。歯周治療と矯正治療の両方に対応できるクリニックであれば、スムーズに治療を進めることが可能です。

Q. 矯正治療中に歯ぐきが腫れたらどうすればいいですか?
矯正治療中の歯ぐきの腫れは、多くの場合プラーク(細菌の塊)の蓄積が原因です。まずはブラッシングを見直し、歯間ブラシやフロスも活用して丁寧に磨きましょう。それでも改善しない場合は、早めにクリニックにご相談ください。プロフェッショナルクリーニングや、必要に応じた治療を受けることで改善が期待できます。

Q. 矯正治療と歯周治療を同時に行うことのデメリットはありますか?
デメリットというよりは、注意点として、治療期間がやや長くなる場合があります。歯周治療で歯ぐきの状態を安定させてから矯正を始めるため、すぐには矯正治療に取りかかれないことがあります。しかし、この工程を省略して歯周病を放置したまま矯正を始めると、より深刻な問題を引き起こすリスクがあるため、安全に治療を進めるための大切なステップとお考えください。

Q. 歯周病の予防のために、歯並びを整えることは有効ですか?
はい、非常に有効です。歯並びが整うと歯磨きがしやすくなり、プラークがたまりにくい環境を作ることができます。また、噛み合わせが整うことで、特定の歯への過剰な負担が軽減され、歯周組織へのダメージも減少します。予防という観点からも、矯正治療には大きな意味があると言えます。


当院の取り組み

東京日本橋AQUA歯科・矯正歯科 包括CLINICでは、矯正歯科と歯周治療の両方を専門的に行う「包括的歯科治療」を提供しております。矯正治療を始める前の詳細な歯周検査から、治療中の継続的な歯ぐきの管理、そして治療後のメンテナンスまで、一つのクリニックで一貫して対応できる体制を整えています。

また、マイクロスコープ(歯科用顕微鏡)を活用した精密な歯周治療を行っており、肉眼では確認しづらい細かな歯石の除去や歯ぐきの状態のチェックも丁寧に実施しております。

自費専門・完全予約制のクリニックとして、お一人おひとりに十分な時間をかけた丁寧な診療を行っております。三越前駅直結の好立地で、お仕事帰りにも通いやすい環境です。

「歯並びも気になるけれど、歯ぐきの状態も心配」「矯正治療を受けたいけれど、歯周病があると言われたことがある」という方は、ぜひ一度ご相談ください。お一人おひとりのお口の状態を丁寧に検査した上で、矯正と歯周治療を組み合わせた最適な治療計画をご提案いたします。まずはお気軽にWEB予約またはお電話でご連絡ください。