学術活動

2026.10.02

矯正治療中の歯周病予防とメンテナンス、通院中の患者様へ


矯正治療をすでに始められている患者様の中には、「装置をつけてから歯みがきがしづらくなった」「歯ぐきが腫れやすくなった気がする」と感じていらっしゃる方もいるのではないでしょうか。矯正治療中は、装置の種類にかかわらず、治療前よりも意識的な口腔ケアが必要になる期間です。

今回は、東京日本橋AQUA歯科・矯正歯科 包括CLINICに通院中の患者様に向けて、矯正治療中に気をつけていただきたい歯周病予防のポイントと、メンテナンスの重要性についてお伝えいたします。

なぜ矯正治療中は歯周病のリスクが上がりやすいのか

矯正治療中、特にワイヤー矯正では、ブラケットやワイヤーといった装置が歯の表面についているため、通常よりも汚れがたまりやすい環境になります。装置の周りや、ワイヤーの下、歯と歯ぐきの境目などは歯ブラシの毛先が届きにくく、意識していないと磨き残しが増えてしまいます。

磨き残しが続くと、歯垢(プラーク)が歯ぐきに炎症を引き起こし、歯肉炎、さらには歯周病へと進行するリスクが高まります。マウスピース矯正の場合は装置を取り外して歯みがきができるため、比較的リスクは抑えやすいとされていますが、マウスピースを長時間装着する性質上、装着前の歯みがきが不十分だと、汚れが歯とマウスピースの間に閉じ込められた状態になりやすいという注意点もあります。

いずれの装置であっても、矯正治療中は「治療前と同じ歯みがきの仕方」では汚れを落としきれない場面が増えるため、装置に合わせたケアの工夫が必要になります。

矯正治療中の歯みがきで意識したいポイント

ワイヤー矯正の場合

ブラケットとワイヤーの間、ブラケットの上下、歯と歯ぐきの境目は、特に汚れがたまりやすい部分です。通常の歯ブラシに加えて、ワンタフトブラシ(部分用の小さな歯ブラシ)や歯間ブラシ、タフトブラシなどの補助的な清掃器具を併用することで、装置周りの汚れを落としやすくなります。歯ブラシを装置の上下から当てる、毛先を斜めに入れて装置の隙間を意識して磨くなど、通常より時間をかけた丁寧なブラッシングが必要です。

マウスピース矯正の場合

食事の後は、マウスピースを装着する前に必ず歯みがきを行う習慣をつけることが重要です。マウスピース自体の洗浄も忘れずに行い、清潔な状態を保つよう心がけましょう。装着中に水以外の飲食を避けることも、虫歯や歯肉炎の予防につながります。

ご自宅でのセルフチェックのポイント

日々のセルフケアに加えて、次のようなサインがないか、ご自身でも意識していただけると、歯周病の早期発見につながります。歯みがきの際に出血がある、歯ぐきが赤く腫れている、口臭が気になるようになった、歯や装置がグラつく感じがある、といった症状に心当たりがある場合は、次回の通院を待たずにご相談いただくことをおすすめします。矯正治療中の歯ぐきの変化は、放置すると歯周病の進行だけでなく、治療計画そのものに影響する可能性もあるため、早めの対応が大切です。

定期メンテナンス(クリーニング)の重要性

矯正治療中は、通常の調整の通院に加えて、定期的なクリーニング(プロフェッショナルケア)を受けていただくことをおすすめしています。セルフケアだけでは落としきれない歯石や、装置周りの汚れを専門的に除去することで、歯肉炎や歯周病の予防につながります。

また、定期メンテナンスの際には、歯ぐきの状態や歯周ポケットの深さなども確認し、歯周病の兆候がないかをチェックします。矯正治療中に歯周組織の状態が変化していないかを継続的に確認していくことは、治療を安全に進めるうえでも重要なプロセスです。

当院では、マイクロスコープを活用した精密なクリーニングにも対応しており、肉眼では見えにくい部分の汚れや歯石も確認しながら、丁寧なメンテナンスに努めています。歯科衛生士専用のマイクロスコープも導入しており、細部まで配慮したケアを心がけています。

当院では、EMSパウダーメンテナンス、ナノケア、フッ素イオン導入、ホワイトニングなどさまざまなメンテナンスをご用意しています。患者様の希望はもちろん、衛生士にご相談いただき決めていただくことも可能です。お気軽にご相談ください。

装置が壊れた・外れたときの対応

矯正治療中、ブラケットが外れる、ワイヤーの先端が飛び出して痛む、マウスピースが割れてしまった、といったトラブルが起こることもあります。このような場合は、自己判断でそのままにせず、できるだけ早めにクリニックへご連絡ください。装置の不具合を放置すると、想定していない歯の動きにつながったり、口腔内を傷つけてしまったりする可能性があります。

応急的な対応方法(ワイヤーの先端に矯正用ワックスをつけるなど)についても、来院時にご案内しておりますので、気になる方は遠慮なくスタッフにお尋ねください。

治療後の保定期間もメンテナンスは続きます

歯を動かす動的治療が終わった後も、後戻りを防ぐための保定装置(リテーナー)を一定期間装着していただく保定期間が続きます。保定期間中も歯周病のリスクがなくなるわけではなく、リテーナーの清潔な管理と、定期的なメンテナンス受診を継続していただくことが、整った歯並びと健康な歯ぐきを長く維持するために重要です。

矯正治療は「装置が外れたら終わり」ではなく、保定期間、そしてその後の生涯にわたるメンテナンスまでを含めて、はじめて治療の成果を維持できるものと考えていただければと思います。

食生活で気をつけたいこと

矯正治療中は、装置に負担をかけやすい食べ方や食品にも注意が必要です。ワイヤー矯正の場合、硬い食品(氷、硬いお煎餅、フランスパンの耳など)を噛むと、ブラケットが外れたりワイヤーが変形したりすることがあります。粘着性の高い食品(キャラメル、お餅など)も装置に絡みつきやすく、外れの原因になることがあるため、控えめにしていただくことをおすすめしています。

マウスピース矯正の場合は、装着中に食事をすることは基本的にありませんが、マウスピースを外した状態での食事自体に大きな制限はありません。ただし、装着前には必ず歯みがきを済ませ、清潔な状態でマウスピースを装着し直すという習慣が、虫歯や歯肉炎の予防につながります。

いずれの装置でも、間食や甘い飲み物を頻繁に摂る習慣があると、歯垢がたまりやすくなり、歯肉炎や虫歯のリスクが上がります。食事の回数や時間帯を見直すことも、口腔内を清潔に保つうえで意識していただきたいポイントです。

年代・ライフステージ別に気をつけたいこと

矯正治療は幅広い年代の方が受けられていますが、年代やライフステージによって、意識していただきたいポイントが少しずつ異なります。

働き盛りの世代の方は、外食や飲み会など、食生活が不規則になりやすい場面での装置ケアが課題になりやすい傾向があります。外出先でも使える携帯用の歯ブラシやマウスウォッシュを活用するなど、ご自身の生活スタイルに合わせた工夫を取り入れていただくとよいでしょう。

更年期以降の世代の方では、ホルモンバランスの変化により歯ぐきの状態が変化しやすいといわれることがあり、もともと歯周病のリスクをお持ちの方も少なくありません。矯正治療中は特に、歯ぐきの変化に敏感になっていただき、気になる症状があれば早めにご相談いただくことをおすすめしています。

いずれの年代の方にも共通していえるのは、矯正治療中の口腔ケアは「治療前より少し丁寧に、少し時間をかけて」行っていただくことが、歯周病予防の基本になるということです。

スタッフからのワンポイントアドバイス

日々の診療の中で、患者様からよくいただくお悩みのひとつに、「毎日きちんと磨いているつもりなのに、装置の周りだけ汚れが残ってしまう」というものがあります。実は、歯ブラシを大きく動かすよりも、装置の隙間に毛先を小さく細かく動かして当てるほうが、汚れを効果的に落とせることが多いといわれています。

また、鏡を見ながら磨くことで、磨き残しやすい部分を目で確認しながらケアできるようになります。通院時には、歯科衛生士が実際の口腔内を見ながら、磨き残しやすい部分を具体的にお伝えしていますので、ぜひ普段のケアに取り入れてみてください。

よくある質問

Q. 矯正治療中に歯ぐきが腫れてきました。どうすればよいですか。
自己判断で様子を見続けるのではなく、できるだけ早めにご連絡ください。歯みがきの仕方を見直すだけで改善する場合もあれば、専門的なクリーニングや歯周病治療が必要な場合もあります。

Q. 定期メンテナンスは矯正治療の通院と別に受ける必要がありますか。
通院のタイミングについては、矯正治療の調整と合わせて受けていただける場合と、別途ご案内する場合があります。詳しくは通院時にスタッフまでご確認ください。

Q. 保定期間が終わったら、もう歯科医院に通わなくても大丈夫でしょうか。
保定期間の終了は矯正治療の一区切りではありますが、歯周病や虫歯のリスクがなくなるわけではありません。整った歯並びを長く維持していただくためにも、保定期間後も定期的なメンテナンスの継続をおすすめしています。

Q. 装置の周りが磨きにくく、毎回時間がかかってしまいます。何か良い方法はありますか。
通常の歯ブラシに加えて、ワンタフトブラシや歯間ブラシなどの補助器具を使うことで、効率よく汚れを落とせるようになることが多いです。どの器具がご自身の装置や歯並びに合っているかは、通院時に歯科衛生士がご案内していますので、お気軽にご相談ください。

まとめ

矯正治療中は、装置の種類にかかわらず、通常よりも意識的な口腔ケアが必要になる期間です。日々のセルフケアの工夫に加えて、定期的なクリーニングやメンテナンスを継続していただくことが、歯周病を予防しながら安全に矯正治療を進めるうえで欠かせません。歯ぐきの様子で気になることがあれば、次の通院を待たずにいつでもご相談ください。