学術活動

2026.06.30

歯周病を放置すると全身が危ない?原因・症状・治療・予防まで完全解説


「歯茎から血が出るけど、歯磨きが強すぎるだけかな」「歯茎が少し腫れているけど痛くないし大丈夫かな」——そう思って放置していませんか?その症状、歯周病のサインかもしれません。

歯周病は日本人の成人の約8割が罹患している、または予備軍と言われるほど身近な病気です。しかも、初期にはほとんど自覚症状がなく、気づいたときにはかなり進行しているというケースも珍しくありません。さらに近年の研究では、歯周病が糖尿病・心臓病・脳卒中・早産などの全身疾患と深く関連していることが明らかになっています。

本記事では、歯周病の原因・症状・進行のステージ・治療法・予防まで、知っておくべき情報をすべて解説します。

歯周病とは何か

歯周病とは、歯の周りの組織(歯茎・歯を支える骨=歯槽骨・歯根膜など)が細菌によって引き起こされる慢性感染症です。原因となるのは、歯と歯茎の境目(歯肉溝)に蓄積したプラーク(歯垢)の中の「歯周病菌」です。

プラークが長期間除去されないと歯石になり、歯石の表面にはさらに細菌が繁殖しやすい環境が生まれます。細菌が出す毒素によって歯茎に炎症が起き、徐々に歯を支える骨(歯槽骨)が溶けていきます。最終的には歯がグラグラになり、抜歯が必要になることもあります。

歯周病は大きく「歯肉炎」と「歯周炎」の2段階に分けられます。歯肉炎は歯茎だけに炎症がある段階で、適切なケアで回復が可能です。歯周炎は炎症が歯槽骨まで及んだ状態で、骨が破壊されると元には戻りません。

こんな症状は歯周病のサイン

歯周病は「サイレントディジーズ(静かな病気)」とも呼ばれるほど、初期には自覚症状がほとんどありません。以下のような症状に心当たりがある方は要注意です。

● 歯磨きや食事のときに歯茎から血が出る

● 歯茎が赤く腫れている、ぶよぶよしている

● 口臭が気になる・指摘されたことがある

● 歯茎が下がって、歯が長くなったように見える

● 歯がグラグラする・噛んだときに痛みがある

● 歯と歯の間に食べ物が詰まりやすくなった

● 起床時に口の中がネバネバする

一つでも当てはまる場合は、早めに歯科医院を受診することをおすすめします。

歯周病の進行ステージ

歯周病はある日突然重症になるのではなく、段階的に進行します。

【Stage 1|歯肉炎】

歯茎だけに炎症がある状態。赤み・腫れ・出血などの症状が見られますが、歯槽骨の吸収はまだありません。この段階では、プロのクリーニングと正しいブラッシングで完全に回復できます。

【Stage 2|軽度歯周炎】

炎症が歯槽骨にまで及び始め、骨が少し溶け始めた状態です。歯周ポケット(歯と歯茎の間の溝)が深くなります。まだ自覚症状が少ないことが多いですが、治療が必要です。

【Stage 3|中等度歯周炎】

歯槽骨の吸収が進み、歯周ポケットがさらに深くなります。歯がやや動くようになり、口臭も強くなります。治療を行っても完全に骨を元に戻すことはできません。

【Stage 4|重度歯周炎】

歯槽骨の吸収が著しく進み、歯がグラグラして咬めない状態になります。最終的には抜歯が必要なケースもあります。このステージまで進むと、治療に時間・費用・精神的負担も大きくなります。

歯周病と全身疾患の深い関係

歯周病が全身に影響を与えることは、今や多くの研究で明らかになっています。

【糖尿病との双方向の関係】

歯周病は血糖コントロールを悪化させ、逆に糖尿病があると歯周病が重症化しやすくなるという「双方向の関係」があります。歯周病を治療することで血糖値が改善したというデータも報告されています。

【心疾患・脳卒中】

歯周病菌が血流に乗って全身に広がると、動脈硬化を促進し、心筋梗塞・狭心症・脳卒中のリスクを高めることがわかっています。歯周病患者は心疾患のリスクが約2〜3倍高いとも言われています。

【誤嚥性肺炎】

特に高齢者において、口腔内の細菌が唾液や食物と一緒に肺に入ることで引き起こされる誤嚥性肺炎と歯周病の関連が指摘されています。口腔ケアが誤嚥性肺炎の予防に有効とされています。

【早産・低体重児出産】

妊娠中の歯周病は、早産や低体重児出産のリスクを高める可能性があります。妊婦さんが歯周病を発症・悪化させやすい理由は、妊娠中のホルモン変化によって歯茎が炎症を起こしやすくなるためです。

歯周病の治療法

歯周病の治療は、進行度に応じて以下のように行われます。

【基本治療(歯周基本治療)】

まず、プラーク・歯石の除去(スケーリング・ルートプレーニング)を行います。スケーリングは歯の表面の歯石を取り除く処置、ルートプレーニングは歯周ポケット内の根面の汚染された組織を滑らかにする処置です。歯磨き指導(ブラッシング指導)も並行して行い、患者自身のセルフケアを改善します。

【歯周外科治療】

基本治療を行っても改善しない深い歯周ポケットがある場合、外科的な処置が必要になることがあります。フラップ手術(歯茎を切開して歯石を直視下で除去する)や、骨を再生させる「歯周組織再生療法(GTR法・エムドゲイン法)」などが行われます。

【メンテナンス(SPT)】

歯周病の治療が一段落しても、治癒ではなく「寛解(症状が安定した状態)」であることを忘れてはいけません。定期的なメンテナンス(サポーティブペリオドンタルセラピー)で口腔内の状態を維持・管理することが、再発防止のカギです。

毎日できる歯周病予防の習慣

歯周病は予防できる病気です。日常のセルフケアと定期的な歯科受診の組み合わせが最も効果的です。

【正しいブラッシング】

歯と歯茎の境目(歯肉溝)を意識して、やわらかい歯ブラシで丁寧に磨きましょう。力を入れすぎると歯茎を傷めるため、軽い力でやさしく磨くことが大切です。

【フロス・歯間ブラシの使用】

歯ブラシだけでは歯間部のプラークは60〜70%しか除去できないと言われています。フロスや歯間ブラシを使って歯と歯の間も清潔に保ちましょう。

【定期検診とプロフェッショナルクリーニング(PMTC)】

セルフケアだけでは取りきれない歯石や汚れを、歯科医院でプロが除去します。3〜6ヶ月に1回の定期受診が理想的です。

【生活習慣の改善】

喫煙は歯周病の最大のリスク因子の一つです。喫煙者の歯周病罹患率・重症化率は非喫煙者より著しく高く、治療の効果も出にくくなります。禁煙は口腔健康のためにも非常に効果的です。また、糖尿病・ストレス・睡眠不足なども歯周病を悪化させる要因です。

まとめ:歯周病は「口だけの病気」ではない

歯周病は放置すると歯を失うだけでなく、全身の健康に深刻な影響を与える怖い病気です。しかし、早期発見・早期治療と継続的なメンテナンスによって、進行を止め健康を維持することができます。

「最近歯茎の調子が気になる」「しばらく歯科に行っていない」という方は、まずは検診から始めてみましょう。あなたの口腔の健康が、全身の健康につながっています。