学術活動

2026.06.17

歯周病は「歯を失う病気」——でも、正しく治療すれば怖くない


「歯周病」という言葉は知っていても、実際にどんな病気なのかをよく知らない方は多いのではないでしょうか。「歯茎が腫れる病気でしょ?」と軽く考えている方もいらっしゃいますが、歯周病は日本人が歯を失う原因の第1位といわれており、放置すると取り返しのつかない事態になりかねない、非常に深刻な病気です。

ただ、怖がりすぎる必要はありません。歯周病は、正しく診断・治療・管理することで、多くのケースで進行を止め、長期的に歯を守ることができます。この記事では、歯周病の基礎知識から治療の流れ、予防まで、わかりやすく解説します。

歯周病ってどんな病気?

歯周病とは、歯と歯茎の境目(歯周ポケット)に溜まった細菌(プラーク)が原因で、歯を支える組織(歯茎・歯槽骨・歯根膜など)が徐々に破壊されていく感染症です。

初期段階では「歯肉炎」と呼ばれ、歯茎だけに炎症が起きた状態です。この段階では、適切なケアで完全に回復することが可能です。しかし、そのまま放置すると炎症が歯を支える骨(歯槽骨)にまで及ぶ「歯周炎」へと進行します。歯槽骨は一度失われると自然には戻らないため、早期の対応が非常に重要です。

歯周病はなぜ進行するの?

歯周病の進行には、大きく2つの要因があります。

細菌(プラーク)の蓄積

歯と歯茎の境目に溜まったプラーク(歯垢)は、細菌の集合体です。これが除去されないまま放置されると、やがて硬い歯石になり、歯ブラシでは除去できなくなります。歯石の表面はざらざらしているため、さらにプラークが付着しやすくなり、悪循環が生まれます。

免疫・体質・生活習慣

細菌への免疫反応の強さは個人差があります。また、喫煙・糖尿病・ストレス・睡眠不足などは免疫を低下させ、歯周病を悪化させることが知られています。喫煙は歯周病の最大のリスクファクターのひとつであり、喫煙者は非喫煙者と比べて歯周病の進行が早く、治療効果も出にくい傾向があります。

こんな症状に気づいたら要注意

歯周病は「サイレントディジーズ(静かな病気)」とも呼ばれ、痛みなく進行することが特徴です。以下のような症状がある場合は、歯周病が始まっているサインかもしれません。

  • 歯磨きをすると血が出る(出血)
  • 歯茎が赤く腫れている
  • 口臭が気になる
  • 歯茎が下がってきた(歯が長く見える)
  • 歯がぐらぐらする
  • 噛むと歯が痛い・違和感がある
  • 歯と歯茎の間から膿が出る

「歯磨きで血が出るのはいつものこと」と思っている方もいらっしゃいますが、健康な歯茎は正しくブラッシングしても出血しません。出血は炎症のサインです。

歯周病が引き起こす全身への影響

歯周病は口の中だけの問題ではありません。口腔内の細菌や炎症物質が血流に乗って全身に回ることで、さまざまな全身疾患と関係することが近年の研究でわかってきています。

  • 糖尿病:歯周病と糖尿病は相互に悪化させ合う関係にあることが知られています
  • 心臓病・脳卒中:歯周病菌が血管壁に付着し、動脈硬化を促進するリスクがあります
  • 誤嚥性肺炎:口腔内の細菌が肺に入ることで起きる肺炎で、高齢者に多くみられます
  • 早産・低体重児出産:妊娠中の歯周病は、早産のリスクを高めるという報告があります

歯周病を「口の中だけの問題」として軽視せず、全身の健康に関わる問題として捉えることが大切です。

歯周病の進行度(ステージ)

歯周病の重症度は「ステージ」で分類されます(国際分類 2017年)。ステージI〜IVの4段階があり、ステージが上がるほど骨の喪失量が多く、歯の動揺や喪失リスクが高くなります。

どのステージにあるかは、歯周ポケットの深さ・レントゲンによる骨の評価・歯の動揺度などを精密に測定することで判定します。ご自身の歯周病のステージを知るためにも、まずは専門的な検査を受けることをおすすめします。

歯周治療の流れ

歯周治療は、段階的に進められます。

ステップ1:精密検査・診断

歯周ポケットの深さを全歯測定し、レントゲンで骨の状態を評価します。プラークコントロールの状態や全身的なリスク因子も確認します。

ステップ2:歯周基本治療(スケーリング・ルートプレーニング)

歯と歯茎の境目や歯周ポケット内に溜まった歯石を専用の器具(スケーラー)で丁寧に除去します。同時に、歯根の表面を滑らかに仕上げることで、細菌が付着しにくい環境を整えます。

ステップ3:再評価

基本治療を終えたあと、改めて歯周ポケットの深さや炎症の状態を評価します。改善が認められれば、この時点でメンテナンス(定期管理)に移行します。

ステップ4:歯周外科治療(必要な場合)

基本治療だけでは改善しない深い部分の歯石や感染組織に対しては、歯茎を切開して直接除去する外科的処置を行います。骨の再生を促す「歯周再生療法」を組み合わせることもあります。

ステップ5:定期メンテナンス

歯周治療が完了しても、定期的なメンテナンスを続けることが最も重要です。歯周病は再発しやすい病気であり、治療後のメンテナンスを怠ると数年で元の状態に戻ってしまうことがあります。3〜6ヶ月に一度のペースで定期的に通院することをおすすめします。

歯周病治療は「終わり」がありません。治療が完了しても、定期的なメンテナンスと自宅でのセルフケアを続けることで初めて、歯を長く守ることができます。

歯周病は「完治」するの?

歯周病は、風邪のように「完治」するものではありません。一度失われた骨や歯茎を完全に元通りにすることは難しいのが現実です。しかし、適切な治療と管理を続けることで、「進行を止め、現状を維持する」ことは十分に可能です。

大切なのは、「治った」と思って安心するのではなく、定期的なメンテナンスを生活の一部として続けることです。歯周病の管理は、一生涯にわたるお口の健康管理といえます。

自分でできる歯周病予防

歯周病の予防・管理に、日常的なセルフケアは欠かせません。

  • 正しいブラッシング(歯と歯茎の境目を意識して、力を入れすぎずに磨く)
  • 歯間ブラシ・デンタルフロスを毎日使う
  • 喫煙をやめる、または減らす
  • 糖尿病など全身疾患のコントロールをしっかり行う
  • 規則正しい生活(十分な睡眠・バランスの良い食事)
  • 定期的な歯科受診・プロフェッショナルクリーニング

セルフケアだけで歯石は除去できません。定期的に歯科でプロフェッショナルクリーニングを受けることが、歯周病予防の基本です。

矯正治療との関係

歯周病と矯正治療は深く関係しています。歯周病が進行した状態で矯正を行うと、骨の破壊が加速するリスクがあります。一方で、歯周病が安定した状態で適切に矯正を進めることで、歯並びが整い、清掃性が上がって歯周病の管理がしやすくなることもあります。

当クリニックでは、矯正と歯周の専門家が連携して包括的に治療を進めますので、歯周病がある方、あるいは歯周病が心配な方も安心してご相談ください。

⇧before

⇧after

まとめ

歯周病は、放置すれば歯を失うリスクのある深刻な病気ですが、正しく治療・管理することで進行を止めることができます。「最近歯茎から血が出る」「口臭が気になる」など、気になる症状があれば、早めに専門の歯科で検査を受けることをおすすめします。

当クリニックでは、歯周の精密検査から治療・定期メンテナンスまで、一貫してサポートしております。まずはお気軽にご相談ください。