学術活動

2026.03.21

他院で断られた方へ ― 当院の難症例への取り組み


はじめに ― 「治療できない」と言われた方へ

「矯正治療を受けたいけれど、他の歯科医院で断られてしまった」「歯周病があるから矯正は難しいと言われた」「歯を何本か失っていて、矯正ができるのか不安」――当院には、こうしたお悩みを抱えて来院される患者さまが多くいらっしゃいます。

矯正治療を断られると、「自分はもう治療を受けられないのだ」とあきらめてしまう方もいらっしゃいます。しかし、治療を断られたからといって、本当に治療の方法がないわけではありません。治療の環境やアプローチが変われば、対応できるケースは数多くあります。

当院では、こうした難症例に対しても、包括的な視点から治療の可能性を検討し、多くのケースで治療をお引き受けしています。今回は、なぜ他院で断られるケースが生じるのか、そして当院がどのように難症例に取り組んでいるのかについて、詳しくお伝えいたします。

矯正治療を断られる主な理由

他院で矯正治療を断られるケースには、いくつかの典型的なパターンがあります。どのような理由で断られることが多いのかを知っておくと、次のステップを考える上で参考になるかもしれません。

最も多いのは、「歯周病の存在」です。歯周病によって歯を支える骨(歯槽骨)が減少していると、矯正力をかけることで骨の吸収がさらに進行するリスクがあります。歯周管理の専門知識と経験がなければ、安全に治療を行うことが困難です。矯正歯科を専門とする医院では歯周治療に十分対応できない場合があり、「うちでは対応できない」と判断されるケースがあります。

次に多いのが、「複数の歯が欠損しているケース」です。すでに歯を何本か失っている場合、残っている歯をどのように並べ、欠損部分をどう補うかを総合的に考える必要があります。矯正治療だけでは解決が難しく、インプラントやブリッジなどの補綴治療との組み合わせが必要となるため、矯正のみを行う医院では対応が難しくなります。

「骨格的な問題が大きいケース」も、治療を断られやすい傾向があります。上顎と下顎の大きさのバランスが極端にずれている場合などには、矯正治療だけでは十分な改善が得られず、外科的な処置との併用が必要になることがあります。外科矯正に対応していない医院では、こうしたケースの受け入れが難しい場合があります。

「過去に矯正治療を受けたが後戻りしてしまったケース」や、「以前の矯正治療で問題が生じてしまったケースでの再治療」も、対応が難しいとされることがあります。再治療は初回の治療に比べて歯や歯周組織の状態が複雑になっていることが多く、より高度な判断と技術が求められるためです。

また、「全身的な健康状態」が理由で断られるケースもあります。糖尿病や骨粗しょう症などの全身疾患がある場合、歯の移動や骨のリモデリングに影響を与える可能性があるため、慎重な対応が必要です。

当院が難症例に対応できる理由 ― 包括的矯正治療™

当院が難症例に対応できる最大の理由は、「包括的矯正治療™(インターディシプリナリーオーソドンティックトリートメント™)」を実践していることにあります。

多くの歯科医院では、矯正治療は矯正歯科の範囲内で完結させることが一般的です。しかし、難症例の多くは、矯正治療だけでは解決できない複合的な問題を抱えています。歯周病、歯の欠損、不良な修復物、顎関節の問題など、さまざまな課題が絡み合っているからこそ「難症例」なのです。

当院では、矯正歯科の専門性に加えて、歯周治療、歯周再生療法、インプラント、審美セラミック修復など、複数の専門分野を横断した治療を一つのクリニック内で提供できる体制を整えています。これにより、他の医院では「対応できない」とされるケースでも、分野を超えた包括的なアプローチで治療の可能性を見出すことができるのです。

院長は日本矯正歯科学会の臨床指導医・認定医であるとともに、日本歯周病学会の認定医、日本口腔インプラント学会の専修医でもあります。矯正・歯周・インプラントの3分野にわたる専門的な知識と経験を持つ歯科医師が治療計画を立案し、マネジメントすることで、複合的な問題を抱える難症例にも対応することができるのです。さらに、アメリカ矯正歯科学会(AAO)やアメリカ歯周病歯科学会(AAP)にも所属し、国際的な最新の知見を常にアップデートしながら治療に臨んでいます。

歯周病を伴う矯正治療への対応

難症例の中でも特に多いのが、歯周病を伴うケースです。当院では、歯周病をお持ちの患者さまの矯正治療に豊富な経験があります。

歯周病を伴う矯正治療では、まず歯周治療を行い、炎症をコントロールして歯ぐきと骨の状態を安定させます。歯科衛生士によるプロフェッショナルクリーニングやブラッシング指導に加え、必要に応じて歯周外科処置を行い、矯正治療を安全に始められる環境を整えます。

歯周組織が安定してから矯正治療に入りますが、治療中も継続的に歯周管理を行うことが不可欠です。当院では、歯科衛生士による「O-SPT(オルソドンティックサポーティブセラピー)」プログラムを実施し、矯正治療と歯周管理を並行して行っています。

さらに、必要に応じて歯周再生療法を矯正治療と組み合わせることもあります。院長が考案した「O-PRO(Optimized Periodontal Regeneration for Orthodontics)」は、矯正治療のための歯周組織再生法として、世界的に権威のある学術雑誌 International Journal of Periodontics & Restorative Dentistry に掲載された実績があります。歯周病によって失われた骨を再生し、より良い条件で矯正治療を行うことを可能にする、当院の大きな強みです。

「歯周病があるから矯正はできない」のではなく、「歯周病を適切に管理しながら矯正治療を行う」ことが、当院のアプローチです。むしろ、矯正治療によって歯並びを整えることで清掃性が向上し、歯周病の再発リスクを低下させることにもつながります。

歯の欠損を伴うケースへの対応

すでに歯を失っている方の矯正治療も、当院が得意とする分野のひとつです。

歯の欠損を伴うケースでは、単に残っている歯を並べるだけでなく、「欠損部分をどのように修復するか」「残存歯をどの位置に移動させれば最も良い結果が得られるか」を総合的に計画する必要があります。

たとえば、矯正治療でまず残存歯の位置を最適化し、その後にインプラントで欠損部を修復するという戦略を取ることがあります。矯正治療によって歯の位置を整えてからインプラントを埋入することで、より理想的な位置に、より良い骨の条件でインプラントを入れることが可能になります。

逆に、矯正治療で歯を移動させることで欠損部のスペースを閉じ、インプラントやブリッジを使わずに対応できるケースもあります。どのアプローチが最善かは、患者さまの歯や骨の状態、年齢、ご希望などを総合的に考慮して判断します。

このような複合的な治療計画を立てるためには、矯正歯科とインプラント治療の両方に精通した歯科医師の存在が欠かせません。当院ではこれらを一つのクリニック内で一貫して行えることが、大きなアドバンテージとなっています。他院を紹介されてあちこちの医院を回る必要がなく、一つの治療計画のもとですべての治療を受けていただける安心感は、患者さまにとっても大きいのではないでしょうか。

60代女性 矯正 インプラント症例

チーム医療による質の高い治療

難症例の治療を成功させるためには、歯科医師一人の力だけでは不十分です。当院では、複数の専門スタッフがチームを組んで治療にあたっています。

まず、当院には日本矯正歯科学会認定医が複数名在籍しています。症例ごとに治療計画を検討し、多角的な視点からアプローチすることで、難しい症例にも対応できる体制を整えています。歯周病学の専門医も在籍しており、矯正と歯周の両面から治療を進めることが可能です。

歯科衛生士による口腔管理プログラム「O-SPT」を通じて、治療中の歯周管理を徹底しています。歯科衛生士も拡大鏡やマイクロスコープを使用した精密なケアを行っており、治療の質をチーム全体で支えています。当院にはマイクロスコープが7台設置されており、歯科衛生士専用のものも含まれています。

さらに、矯正装置の製作を専門とする技工士が在籍していることも当院の特徴です。患者さまお一人おひとりに合わせたオーダーメイドの装置を院内で製作しています。特に舌側矯正では、装置の精密さが治療結果を大きく左右するため、高い技術を持つ専門技工士の存在は非常に重要です。

治療計画の段階から技工士も参加し、セットアップモデル(治療後の歯並びのシミュレーション模型)を製作することで、治療のゴールを明確にした上で治療を進めることができます。この模型は、顎関節・歯周病・審美性・インプラントの配置など、従来の矯正治療ではあまり考慮されなかったさまざまな要素についても最適な検討を行うために活用されています。

過去に矯正治療で問題が生じた方へ

以前に矯正治療を受けたものの、「噛み合わせがしっくりこない」「後戻りしてしまった」「治療途中で中断してしまった」「仕上がりに満足していない」といったお悩みをお持ちの方もいらっしゃるかと思います。

再治療は、初めての矯正治療よりも複雑になるケースが多いです。すでに歯が一度移動した後であること、歯根の状態が初回治療前と変わっていること、歯周組織に変化が起きている可能性があることなど、考慮すべき要素が増えるためです。

当院では、過去の治療の問題点を丁寧に分析し、何が原因で問題が生じたのかを明確にした上で、再治療の計画を立てています。セファロ分析やCTなどの精密検査を行い、現在の歯や骨の状態を正確に把握してから治療方針を決定します。

大切なのは、同じ問題を繰り返さないことです。当院では、歯並びだけでなく歯周組織の状態や噛み合わせのバランスまで包括的に評価し、根本的な原因に対処した治療を行うことで、長期的に安定した結果を目指しています。後戻りの原因が舌癖や口呼吸にある場合には、MFT(口腔筋機能療法)などの対策も治療計画に組み込みます。

「一度失敗したから、もう矯正治療は怖い」と感じている方にこそ、信頼できる環境で再治療を受けていただきたいと考えています。

すべてのケースで治療が可能なわけではありません

正直に申し上げますと、すべてのケースで治療が可能とお約束することはできません。患者さまの全身の健康状態や、歯・骨の状態によっては、矯正治療のリスクがメリットを上回ると判断される場合もあります。

当院では、精密検査の結果をもとに、治療の可能性を正直にお伝えすることを大切にしています。無理に治療をお勧めすることはありませんし、リスクがある場合には、そのリスクについても丁寧にご説明いたします。

「できること」と「できないこと」を正直にお伝えした上で、患者さまが最善の選択をできるようサポートすること。それが、当院が大切にしている姿勢です。治療をお引き受けする場合には、最善の結果を目指して全力で取り組みます。

おわりに ― あきらめる前に、一度ご相談ください

「他で断られたから、自分はもう矯正治療を受けられないのだ」とあきらめてしまうのは、とてももったいないことです。治療の方法や環境が変われば、対応できるケースは多くあります。

当院では、他院で治療が難しいと言われた方のご相談も数多くお受けしています。まずはお話をお伺いし、精密検査を行った上で、当院で対応可能かどうかを正直にお伝えいたします。

矯正相談は、WEB予約またはお電話にてお申し込みいただけます。当院は完全予約制ですので、十分な時間を確保して丁寧にお話を伺います。お一人で悩まず、ぜひ一度ご相談ください。皆さまのお口の健康と笑顔を、包括的な視点でサポートしてまいります。