学術活動

2019.07.17

【危険!?】非抜歯矯正のリスクについて症例で説明


非抜歯矯正で何が起きるのか?

“いかなる矯正方法を用いても、歯槽基底部(歯の根周囲の外側の骨)を超えた移動は不可能である。”

1923年に矯正医であるスウェーデンのランドストーム氏が発表した有名な論文で述べている内容です。

また、私の友人でもあるポーランドのフダレイ教授は、元々歯肉が薄い人は、矯正後に歯肉退縮(歯ぐきが無くなってしまう)しやすいことをアメリカ矯正歯科学会にて発表し、無理な非抜歯による矯正治療は歯肉退縮のリスクを高める可能性があると述べています。

 

図解

歯肉・歯茎・歯槽基底部が薄いにも関わらず非抜歯矯正等で外側に広げるに歯を移動させると歯肉退縮が発生し、歯の健康上に大きな問題を生じる事がある。

 

 

 

非抜歯矯正の成り立ちから現在まで

 

近代の矯正学の父と言われるエドワードアングル氏が、1911年に突然、従来まで頻繁に行われていた抜歯を伴う矯正治療を否定し、矯正学会を巻き込んだ大論争が起きました。そして、これを期に、非抜歯矯正を主体とする学派が誕生したと言われています。

 

しかし、その後、アングル自身の弟子達によって、非抜歯絶対主義の考えは完全に否定されるという矛盾が起きています。つまり、学術界でも抜歯か非抜歯かという点については混乱状態にあるともいえます。

 

非抜歯矯正が、または、抜歯矯正のどちらが優れているという観点ではなく、現在、世界的の矯正専門医の共通見解として、上記の歯槽基底論を基準にした矯正診断を行い、非抜歯、抜歯矯正を個々の患者さんの状況に応じて選択する事がグルーバルスタンダートな矯正治療が大切です。

 

非抜歯矯正が不適応の人が非抜歯矯正を行う場合の対処法

 

矯正治療では、歯槽基底やボーンハウジング(矯正で動かせる範囲は、骨の量に依存します) の状態によっては歯肉退縮を引き起こします。歯肉退縮が起きてしまった場合、一般的には、遊離歯肉移植術によって対応を行ってきました。

 

【図解】 遊離歯肉移植術による歯ぐきの再生

 

しかしながら、遊離歯肉移植は、歯肉退縮に対する対処法として非常に有用な方法である一方、骨は再生する事ができません。従って、遊離歯肉移植術を行なった後に矯正移動を行うと、歯肉退縮再発してしまうことがあります。

そこで、歯肉と骨の両方を再生することでより安全に非抜歯矯正を行うことが可能です。私が、本方法について、学会講演した症例で治療についてご説明します。

 

実際の症例

 

以下の症例は、一般的に矯正治療で抜歯する小臼歯が左右一本づつ(既に)少ない状態のために、抜歯にて矯正ができない状態でした。しかし、従来の方法で非抜歯矯正を行うと歯槽基底部を越えた移動となり歯肉退縮が発生する危険があります。

 

そこで、当院では、歯槽基底部の骨について、歯周再生手術を矯正治療に取り入れることで矯正抜歯を行わなくても安全に非抜歯矯正を行うことが出来ました。

 

術後6〜12ヶ月で歯槽基底部の骨が大きく再生していることがCT像や口腔内写真で明らかにわかります。

 

 

当院では、この様に非抜歯矯正を安全、確実に行なっております。

*非抜歯矯正は、個々の患者さんの状況によって適応できる場合と出来ない場合があります。詳しくは、当院の矯正初診相談にてお聞きください。