学術活動

2021.01.30

家の壁に気付いたらヒビ…歯にも起こりうるって本当!?


いつもAQUA日本橋DENTAL CLINICのブログをご覧いただき、誠にありがとうございます。

あっという間に1月も終わりに近づいていますね。ちなみに2021年の節分は124年ぶりに2月2日になるそうです。

さて今回は歯の破折(ヒビ)についてご紹介させていただきます。

 

 

 

家の壁に気付いたらヒビ割れが…

同じことが歯にも起こりうるって本当!?

 

 

突然ですが皆さん、毎日無意識的に歯磨きをしていませんか?

せっかくですのでご自身の歯の状態を一度じっくりと観察してみてください。すると、歯にうっすら線がある方も少なくないと思います。

そうです、これが亀裂(ヒビ)です。

 


 

歯をぶつけたわけじゃないのにヒビが入るの?

 

歯のヒビは、日常生活を過ごす上で起こります。ご自身の「噛む力」によって、歯のヒビがいつの間にか出来てしまうのです。

最初は痛みなどの症状もありません。ただし、ヒビが浅い場合には経過観察で済むものの、ある程度進行してしまうと、場合によっては最悪抜歯をしなければならないこともあります。

 

当院を訪れる患者様の中には『他の歯医者さんで歯が割れていると診断され、抜歯が必要と言われたのですが…。なんとか抜かずに残せないでしょうか?』というご希望の方が毎週必ず一人は相談にいらっしゃる状況です。

 

ヒビが入った歯(以下「破折歯」と呼びます)は、ヒビの進行具合と症状によって治療方針が異なります。

 


ヒビが入るとどんな症状が出るの?

 

 

破折歯は初期症状として『歯に違和感がある』『なんか響く感じ』『この歯で噛むと変な感じ』といった特徴的な症状が現れてきます。今まで特に問題のなかった歯が、ある日を境に違和感を感じる、痛みが出てきた、というのは要注意のサインです。

特に、過去の治療で神経を取ってある歯の場合、噛み合わせの面のヒビが歯の根っこの部分にまで達し、割れや亀裂が入ることがあります。神経がある歯に比べて神経がない歯の破折のリスクはおよそ7.4倍にもなるため注意が必要です。

ヒビから細菌が中へ流入してしまうと、歯ぐきが腫れたり、何もしなくても痛みが出ることがあります。

残念ながら、歯の表面のヒビは放っておいても自然に治ることはありません。
どれだけ浅くても自然治癒はしないため、それ以上ヒビが入ることが無いよう予防する必要があるのです。


 


 

そもそも、なぜ歯にヒビが入るの??

 

 

破折歯は、基本的に日常生活を行う上での食事や食いしばりなど、ご自身の噛む力により起こります。

  • 硬い食べ物が極端に好きではないですか?
  • いつも右ばかり(もしくは左ばかり)で食べる癖がありませんか?
  • 歯の数が少なく、残っている歯に過度な力がかかっていませんか?
  • 寝ているときに無意識に、食いしばりや歯ぎしりをしていませんか?
  • 最近歯のすり減りが気になっていませんか?

 


 

歯にヒビが入っているか、どうすればわかるの??

 

当院では破折歯の検査を行なっております。

1. 問診

「いつ頃から」「どの部分の歯が」「どのように」「どのくらい」「今までの歯科病歴」などをヒアリングさせていただきます。

また、破折歯についてだけでなく、他の被せ物が入っている歯やすでに抜歯されている箇所についてもお話を聞かせてください。

日常生活に破折歯へのヒントが隠されています。

 

2. 画像診査

・パノラマエックス線撮影

 

・デンタルエックス線撮影

 

・CT撮影

 

レントゲン写真に破折線がパッカリと写ることは少なく、基本的には『画像上では破折が強く疑われる』という検査結果が多いです。

実際には破折を目で確認し確定診断に至ります。

 

3. 歯周組織検査

  限局した深い歯周ポケット

 

ヒビから細菌が入り込み感染を起こしてしまうと、歯を支える周りの組織に炎症が起き、歯ぐきが腫れたり膿が出たり、骨が溶けたりします。

 

4. 視診

  

確定診断

 

実際にお口の中を見せていただき、ヒビとその深さを確認します。

被せ物が入っている場合には、それを一旦除去しないと確定診断に至らない場合が多いです。 


 

歯のヒビにはどんな治療を行うの?

 

治療法はヒビの入っている方向や、ヒビの到達度によって異なります。

また、ヒビが深くまで入り込み、歯周組織にも広く感染を起こしてしまっている場合は抜歯を選択せざるを得ないこともあります。

治療法は下記の状態を確認して決定します。

 

  • ヒビを埋め感染を止められるか(ヒビの深さを確認)
  • 歯周組織がすでにどの程度のダメージを受けているか
  • 患者さんの日常的習慣リスクはあるか ←とても重要!
  • 例:硬い食べ物を好んでよく食べる、ストレス等による食いしばり、睡眠時の歯ぎしり
  • 破折歯自体の強度はどのくらいか(歯の厚みや丈、量)

 

当院では多くの破折歯を治療しており、保存できず抜歯となってしまった症例や数年後に抜歯となってしまった症例、現在も長期保存できている症例など様々です。

これらの実績を踏まえて、治療を行う前から破折歯の予後を見極め、治療の提案を出来うる限り行なっております。

検査の結果「今後5年以上は何事もなく使える可能性が考えられる」という症例においては、破折修復治療(歯の保存)を勧めております。

また、破折修復が成功する可能性が極めて低い症例には保存治療は勧めず、抜歯のご提案をさせていただいております。

 

 

破折歯の治療で難しいのが『破折修復が成功するかどうか見極めに難しい症例』をどう捉えるかです。

破折修復治療にはだいたい6ヶ月ほどの治療期間を要します。治療後も2〜3年ほどで再破折を起こすケースも少なくありません。

再破折してしまった場合の予後は悪く、抜歯に至ってしまうことがほとんどです。

 

こうなった場合、

『3年でも自分の歯で噛めてよかった』

と感じるか

『半年も治療して3年しか持たなかった』

と感じるかは患者さんによって違います。

それは、歯に対する価値観が人によって様々だからです。

 

そのため当院では、治療を開始する前にできるだけ精密な検査を行い、その歯の大まかな予後をお話しし、その上で患者さんがどうしたいかを大事にしております。

患者さんの希望を踏まえて治療方針を決定し、同意を得られた上で治療を開始します。

他院で「抜歯をするしかない」と診断された患者さんのセカンドオピニオンも受け付けておりますので、ぜひ一度ご相談ください。

※破折歯の修復治療は保険外治療となる場合もあります。予めご了承ください。

 


 

治療を行なった後はどのようにケアすればいいの?

 

破折修復の治療後は、必ず歯科医院での定期検診を受診しましょう。

歯は固定されておらず、実は常に微小に動いています。

 

  • 破折修復歯が強くかみ合わさってきていないか?
  • 歯茎は腫れてきていないか?
  • 他の歯にもヒビは出現していないか?

 

などを専門家にしっかりチェックしてもらいましょう。前述した通り、ヒビは初期であれば治せる可能性が高いです。

また、患者さんの日常生活における癖の改善も重要となってきます。

 

  • 治療した歯を使って極端に硬い食べものを食べ続けていないか?
  • いつも右ばかり(左ばかり)で食べる癖を続けていないか?
  • 歯がないところをそのままにして破折修復歯に過度な力がかかり続けていないか?
  • 日中、気付くと食いしばっていないか?
  • 睡眠時、食いしばり歯ぎしりをしていないか?

 

破折修復歯は再破折してしまうとほとんどが抜歯に至ってしまうことを忘れないでください。

 

ただ、睡眠時の食いしばり歯ぎしりは無意識のためご自身の意思で止めることができません。

そんな方はマウスピース(ナイトガード)を製作し、歯にかかる負担を減らしましょう。

マウスピースの作成は保険適用となります。